バラ作りの間ではバラの新年は12月と言われています。これは、鉢物の植え替えや地植えの移植、大苗の植えつけや元肥入れなどの作業が、12月に始まるからです。しかし、本当の意味で出発点となるのは、冬の剪定です。暖地ではバラが休眠している期間はごく短く、1月中旬には地下の白根が伸び始めます。地下の白根に呼応して、枝の先端部の芽から徐々に伸び出します。やがて、剪定したい位置の芽も艶を帯び、今にも伸び出しそうになってきます。そのタイミングを捕えて、その芽の上5〜10ミリほどの位置を芽の角度に合わせて斜めに切ります。斜めに切るのは、雨がたまって腐敗するのを防ぐことと、水揚げが届かず枯れ込むことがあるからです。このタイミングが難しいのですが、1月中は先端部近くの芽が伸びているだけで、下部の芽は伸び出していないのが普通です。
最近のように温暖化が進むと、芽動きが早くなるので、例年より早く剪定した方が良いのではないかとの説も出ています。しかし、あまり早く剪定すると、剪定した位置の芽がまだ寒い日も多いのに伸び出します。そのまま温暖な日が続けば問題はないのですが、寒の戻りで、まだまだ寒い日があります。剪定の刺激で伸び出した芽は、5度以下の低温にさらされるとブラインド(花が咲かない枝)になる危険性が高くなります。バラの芽は伸び出す前から葉は造られていますが、花はまだ造られていません。品種により異なりますが、HT(ハイブリッド・ティー、四季咲き大輪種)やF(フロリバンダ、四季咲き房咲種)などは芽が伸び出して1〜4センチほどになった時、花芽分化と言って、がく片、花弁、雄ずい、雌ずいの順に分化します。この花芽分化は非常にデリケートで、日照不足や低温(5度以下)に遭うと発育停止を起こし、がく片や花弁細胞は崩壊して壊死します。その結果、枝は正常に伸びているのに蕾がつかないブラインド枝になります。ただし、雄ずい雌ずいまで分化が進むと、その後は低温や日照不足に遭っても、ほとんど発育停止はしません。このような理由もあって、早く剪定するよりも遅く剪定する方が安全性は高くなります。
1月中は内側の込み合っている細枝や古い枝をぼつぼつ整理するだけにします。深く切り込んだり、上部の伸び出した芽を欠き取ったり、枝を切ったりしない方が懸命です。昨年花が咲いた枝を切除する程度に止めます。上部の芽の伸びが気になって、剪定予定の芽の少し上なら大丈夫だろうと切ったりすると、肝心の大切な芽が早目に伸び出して口惜しい思いをさせられます。そんな理由で1月中の剪定は我慢して2月中旬以後に剪定するのが常道です。
剪定する枝は、昨年伸びたシュートが最優先です。毎年シュートの数が多ければ古い枝はすべて切り捨て、シュートだけにできますが、10年以上になると勢力が落ちてシュートが1〜2本ぐらいになってきます。そんな時は昨年花が咲いた枝や、花が咲いた枝のつけ根から伸び出した、やや太い枝も残してバランスよく剪定します。シュートが1本もなくても、ほかの枝が代役を果たしてくれます。まだ寒い時期に伸びている芽は、低温の影響で花芽分化を停止する確立が高いのでカットして、これから伸び出そうとしている芽の上で剪定します。
普通HT(ハイブリッド・ティー、四季咲き大輪種)は夏の終わりまで、ピンチを続けます。ピンチ(シュートが伸び出して蕾がポツンと見える頃、先の方を指で折り取ること。ピンチを繰り返して花を咲かせず、秋まで育てる)の跡がコブ状になり、2~3回繰り返したシュート枝をコブごとに1段目~3段目と言いますが、1段目や2段目の中程のふっくらとした、伸び出す寸前の芽を選んで剪定します。‘剪定は選定に通ずる’と言われますが、正に、良枝を選定し、良芽を選定する訳です。また、各段ごとの枝のうち、上部の芽は活性が弱くあまり良い枝にはなりません。下部の芽は発芽が強く抑制されていて萌芽が遅く、中間位置の芽は抑制も強いが、萌芽後の枝は活性が強く、剪定後ふっくらと膨張し、勢いよく伸び出します。たくましく素直に伸びる枝に良花が咲きやすいので、各段の中間の良芽を選んで剪定します。
芽が虫に食われたり、傷がついたりして良芽がない時はピンチ跡のコブで切ってください。芽出しはやや遅れますが、潜在芽が多いので、コブから4〜5本の枝が伸び出します。様子を見ながら、少しずつ整理して1本だけ残します。内向きの芽は避けて外向きの芽で切るのが、枝が込み合わないのでよいのですが、HTの場合は花数が少ないので、あまりこだわらないでください。F(フロリバンダ)はHTより枝数を多くするため、HTよりやや浅めに剪定します。内側の込み合う枝は切り取り、風通しをよくします。
Min(ミニチュア)の剪定
ミニチュアは枝数が多く細枝で芽も小さいので、内側の込み合う枝や細枝を切り取り、全体の1/3〜1/4ぐらいまで切り詰めます。即ち2/3〜3/4ほど上部の枝を切る訳です。ミニバラは思いきって切り詰めた方がよく育ちます。
オールド・ローズ
オールド・ローズは栽培歴も長く、品種や系統も多いので一概には言えませんが、大まかに言えば、ガリカ系はそれほど樹高が伸びないので、全体の2/3程度に切り詰めます。ハイブリッド・ティーやフロリバンダのように、新しい枝だけでなく、昨春花が咲いた枝も残して切るほうがにぎやかに咲きます。センチフォリア系やダマスク系は樹高が高いものが多いので、全体の1/2程度に切ります。アルバ系は高いところに花が咲き易いので、枝先を軽く切除する程度にとどめます。くり返し咲き性のあるブルボン系やハイブリッド・パーぺチュアル系、チャイナ系やポリアンサ系などは、フロリバンダのような感覚で剪定します。
オールド・ローズはHTのように良芽を選んで切る必要はありません。どこからでも花枝が延び出し易いので、全体の樹形を整えることを主眼にして、ハサミを入れてください。
イングリッシュ・ローズ
イングリッシュ・ローズは、バラの分類上はシュラブ・ローズになっていて、イングリッシュ・ローズとして認知はされていません。ただし、シュラブ・ローズそのものに近かったり、まったく異なった性質だったりしているので、この性質によって剪定方法も違ってきます。イングリッシュ・ローズの生みの親のデビッド・オースチンによれば、大きく分けて次の四樹形になるという。即ち、アーチ型、散開型、ブッシュ型、直立型です。アーチ型は半つるバラのような樹形になり、散開型は横張りで巾広の散開状態となる。ブッシュ型と直立型はHTやFに似た樹形のものです。
アーチ型の場合は、半つる状に伸びた枝をどこで切るかということになりますが、広い場所で特長のある樹形を保たせたいときは、枝先を1/4〜1/5ほど切り戻す程度でよいでしょう。スクリーンや小さなアーチなどに、つるバラのように利用している場合は、シュートの先を30〜40センチ切り詰める。つるバラと同じ剪定でよいでしょう。散開型は、フロリバンダより浅目に枝先から1/3〜1/4程度の位置で剪定します。直立型のタイプは強剪定しないと、樹高が高く伸びすぎるので、全体の1/2ぐらいに切り詰めます。このタイプは丈を低くしたい時は、思いきってもっと深く切り詰めても大丈夫です。また、花壇の奥のバラは高く手前は低く切って、高低差をつけたい時も、自由に剪定してください。それくらい融通もききます。
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