1. 芽かき(芽の整理)

3月末までに、出開きの芽やブラインドの芽をぼつぼつ整理して4月に入りますが、最終的な芽かきは、蕾を確認してから実施することが大切です。10〜15cm程に育ったステムで、先端がふっくらと充実していれば、たいてい蕾を内蔵していますが、なかなか見分け難いものです。ステムは充実しているように見えても、蕾が付かず、がっかりさせられることがしばしばあるので、確実に蕾を見てから制限するようにしてください。
4月初旬はまだ寒波襲来の不安があり、ひどい時は内蔵した蕾が全滅することもあり、油断できないので、慌てて芽の整理をせず、将来交差し傷つけ合いそうなステム(新梢)や、1ヶ所から3〜4本出たもの、下部の貧弱な芽などを取り除いて、じっくり様子を見ていてください。やがてステムが15〜20cm程になり、先端を指で触ってみると、ごろごろした感触で蕾のあることが分かります。
当地では、その時期は例年15日前後になりますが、それでも遅いステムはまだ10cm程度で蕾の確認はできません。しかし、生長の遅れているステムの方が案外素直な良花を咲かせるので、もう少し待ち、20日を過ぎて蕾を目で見てから最終の制限をします。20日前後でもまだ蕾の確認ができないものもありますが、この頃なら、ステムの先が膨らんでいれば蕾の存在は間違いないないので、蕾が見えなくとも充実した良いステムを選んでください。
次に述べることは、秀花を咲かせるためのテクニックなので、興味のない方は飛ばしてください。
生長の早いトップの芽(頂芽)は、蕾もかなり大きくなっていますが、ほとんど良花は期待できないので、予定本数が十分な時は、5枚葉2〜3枚つけてピンチします。もっとも、充実したステムを折ることは、最初は勇気のいることですが、惜しまずにピンチすると、養分の流れが第2第3のステムに移り、好結果を得られます。頂芽は真っ先に伸び出し、ステムが1〜6cmぐらいの花芽分化の時期に寒害を受けやすく、養分も集中しがちで、すっきりした花は咲き難いので、ピンチを実施していない方は試みてください。頂芽をピンチすると、それより下部の1〜2本のステムがバランスよく育ち、頂芽をそのまま咲かせた時と比べ格段に良くなります。頂芽をピンチした後そこから伸び出すステムには、6月に入って花が咲くことになり、また充実した枝葉は大切な同化作用を担い、切花によるショックを和らげるので、次芽まで切り戻さない方が良いと思います。ただし、節で剪定してあると、他の芽よりやや遅れて数本伸び出してくるので、良いステムだけ残し他の芽は欠き取っておくと、素直なステムになり、良花が咲きやすくなるのでそのまま育てます。
最終的な芽の整理といっても、この時点ではまだ風害や害虫で花にならないものもでるので、各枝とも予定の本数より1〜2本多く残しておきます。被害を受けた枝は、元から切り取るのではなく、樹のためにピンチして葉を残してやりましょう。茎蜂襲来のおそれがなくなったら、樹のバランスを見て、花数が多過ぎると思ったら間引く枝を決めます。せっかく育った枝なので惜しくなるものですが、ここで花数を減らすことが花を大きくするコツなので、是非実行してください。もちろんこのような制限は、コンテストに出したり秀花にこだわるのでなければ、必要のないことです。
こうしてみると、相当のステムを無駄にするようですが、実際は、放っておいても水準以上に伸びる花枝は、多過ぎるほどにはならないもので、それぞれの樹齢や力に応じた花を咲かせます。健全な花枝に養分を集中させるため、ちょっと手助けするだけでよいのです。難しく考えることはなく、やや遅れ気味にブラインドや出開きの不要芽、貧弱なステムや互いに傷つけ合うステムなどを取り除いてやれば、自然に必要な花枝が残るものです。
2. 施肥

3月と同様、今月も原則として追肥は不要です。ただし、元肥を入れない追肥主義の方や、元肥が不十分だったり、砂地などで肥持ちの悪い土地では、元肥だけでは不足気味になるので、先月同様追肥してください。特に追肥主義の方は千代田化成のような即効性のものを1株当たり10gほどを1週間〜10日の間隔で与えてください。また、元肥が不足気味の方は月に2回ほど与えます。たっぷり元肥が入っている肥持ちのよい土地では、バラの伸長に合わせて、気温の上昇とともに肥料分は盛んに分解されて、バラの根に補給し続けているはずです。過食で太らせるよりは、バランスのよい栄養で質的に良好な生育をさせた方がよく、見かけだけの太いステムには決して秀花は咲きません。化学肥料の追肥は、どうしても一時的に効き過ぎ、斑があるので、施す場合は少量ずつ与え、努めてなだらかな肥効に調整しますが、徐々に肥効を現す有機質肥料の元肥が最もよいようです。
リン酸がよく効く肥料があるからと聞き、大量に与えたりすると肥料バランスがくずれて、下葉の葉縁からネクロシス(葉縁から枯れ込む)を起こして落葉したり、鉄、亜鉛、銅などの微量要素の欠乏を助長し、クロロシス(葉縁や葉脈が黄白化する)を生じたりします。思いつきで肥料を与えないことが無難です。
3. 風よけ

‘春は風と共に来たりぬ’で、この春一番の強風は、台風そこのけの被害を与えるものです。始末の悪いことに春風は、波状的に二波、三波と吹きまくり、せっかく伸び出したステムを傷めつけます。
私の庭は猛烈に風当たりの強いところで、フレームを設備しないと、満足な状態で花を見ることはできません。寒冷紗で囲い、天井にも張ることによって防いでいます。風当たりの少ない場所ならば、それほど苦労はないと思いますが、それぞれの環境に合った方法で、風害を防いでください。葉が折れたり傷ついたりしては、観賞価値が低下するし、無傷の時でも風当たりが強いと、バラは倒れまいとして茎も葉も小さくずんぐりとまとまってしまいます。かといってガラス室に入れて無風にすると、花屋のバラのようになり、これも困りものです。寒冷紗が愛用されるのは、適当に風を和らげ、茎や葉をバランスよく育てると同時に、葉が固まる頃の日照からの保護が大きな要因です。
4. 病害虫防除

バラの栽培は、薬剤散布なしに無病で育てることは不可能です。特にハダニとクロホシ病は放置すると枯死につながります。無農薬で育つバラがあれば、日本中にバラがあふれるだろう、そんな丈夫なバラができないものかと常に思っています。
いずれにしても農薬散布はなるべく少なくしたいので、ぎりぎりまで我慢して4月中旬頃から始めます。害虫で真っ先に現れるのはアブラムシです。この虫はオルトランで簡単に駆除できます。ハダニはまだ活動していないと思いますが、暖かい日だまりなどでは、そろそろ現れることもあります。何となく葉色が薄く葉裏が汚れていたら、ハダニを疑ってください。ルーペで覗くと、せわしなく動き回るハダニを確認できます。殺ダニ剤には、ダニを殺す作用が異なるものが何種類かあり、それを交互に使うことによって効果を挙げることができます。原則的には同じ薬は年1回の使用としてください。
次にバラに適用登録のある殺ダニ剤と作用機構を列挙してみます。
| ニッソランV(乳剤) |
→脱皮阻害 |
| コロマイト(水和剤) |
→クロラドチャネル活性化(神経系のかく乱) |
| テルスター(水和剤)(フロワブル) |
→神経伝達機能の阻害 |
| ダニカット(乳剤) |
→神経伝達の増加 |
| オサダン(水和剤) |
→エネルギー生成系の酸化的リン酸化阻害 |
| カスケード(乳剤) |
→脱皮阻害 |
| ダニトロン(フロアブル) |
→ミトコンドリア電子伝達系阻害 |
| ロディ(乳剤) |
→神経伝達機能の阻害 |
これらの殺ダニ剤のうち、殺卵、殺幼虫、殺成虫のいずれにも効くのはニッソランV,コロマイト、ダニカットの3種類のみです。作用機構も異なるので、基本的にこの3薬で交互に使用するのがベターです。他にオサダンは殺卵に効果がなく、ダニトロンは殺卵性がやや劣りますが、作用機構が異なるので追加しておくとよいでしょう。
薬剤の濃度については、春先の新芽の頃は薬害が出ることがあるので、用心のため規定濃度より薄くしますが、面倒な方は規定通りでもそれほど薬害はひどくありません。その際、例えば薬品のラベルに希釈倍率1000〜2000倍となっていたら、薄い2000倍に合わせてください。1000〜2000倍とは2000倍でも十分効果があることを表しているのです。
薬剤は同じ系統のものを使い続けると効き目が弱くなるので、異系統の薬剤を交互に使うようにします。オルトランとアドマイヤーがその例です。オルトランは有機リン系、アドマイヤーはネオニコチノイド系です。
栽培本数が少ない方は、効果は不十分ですが薬剤調合のわずらわしさがないスプレー缶タイプが手軽に使えて便利です。市販の商品がたくさんあり、選ぶのに迷うほどですが、1種類だけ選ぶなら‘オルトランC’がよいでしょう。‘オルトランC’にはクロホシ病によく効くサプロールが入っています。そのほかウドンコ病に‘カダンP’‘バラギク119’や‘大正園芸ゾル’などを用意して適宜使い分けるとよいでしょう。
尚、展着剤に商品名は書いていませんが、5000倍のものは使いにくいので、ニーズとかアプローチBIなどの1000倍で使用するものもありますから、これらを使っても結構です。
この場合、水1リットル当たり展着剤1mlとなります。
乳剤が一種類でも入っている時は、展着剤は入れないでください。展着剤が多過ぎると、かえって薬剤がつきにくくなります。