財団法人 日本ばら会
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月々のお手入れ

・・・・・・・ 5 月 の お 手 入 れ の ポ イ ン ト ・・・・・・・
1. 潅水  水はバラの栄養ドリンク・たっぷり与える
2. 副蕾摘み  大輪種は主蕾を残し房咲き種は主蕾を摘みとる
3. 病害虫防除  開花中でも油断大敵
4. 施肥  地植えの追肥は一休み・鉢は色づくまで
5. 新苗の育て方  新しいシュートを育てる
6. その他  花に浮かれて切り過ぎ禁物



財団法人日本ばら会は、バラ好きの方や

バラをより深く知りたい方の入会を歓迎しています。

年一回、珍しいバラ苗の無料配布(*)があり、

毎月発行の機関誌「ばらだより」はバラ情報満載です。

その他詳しいことは、(財)日本ばら会事務局にお問い合わせください。

電話・03−3702−9413

入会金不要

年会費10,000円

*希望者のみ。苗代は無料ですが、箱代・送料1,000円をご負担いただきます。





1. 潅水

 早咲きのバラは、ほかのバラにさきがけて、4月末から5月初めにかけて咲き始め、バラシーズンの到来を告げます。待ちに待った季節です。十二分に堪能しましょう。力強くすくすく伸びた花枝に、緑濃い葉、蕾も日ごとにふくらみ、中旬になるとせきをきったように一斉に咲き乱れます。

 今月の初旬は、開花のための最終仕上げですから、入念に行いましょう。
「バラは水で育つ」の格言通り、水やりが花の良否を左右するファクターです。地上の枝や葉が茂るのに比例して、地中の白根も四方八方に伸び、肥料をたっぷり含んだ水を活発に吸い上げ、地上部に供給します。特に葉緑素たっぷりの葉は、5月の光を受けて光合成を行い、バラの隅々まで必要な栄養分を送ります。

 バラにとっての食料は主としてチッソ、リンサン、カリの三要素です。とりわけチッソが大好物で主食です。ただし、あまり多いと全体に軟弱となったり肥満体になり、病気にかかり易くなるので、やはり他の要素とのバランスが大切です。バラにはチッソよりもリンサンやカリを多くしたほうがよい、との説もあり、軟弱でウドンコ病にかかり易くなるのを警戒して、極端に少なくする人がいますが、バラの主食はやはりチッソですから、こわがらずに与えてください。不足すると伸び伸び育たなくなります。

 いずれにしても、地中から栄養ドリンクを白根で吸収し、有効成分を製造する葉に送って、いろいろな成分を作るのですから、開花を控えて十分力をつけるために、水やりは大切な作業となります。

 ただし、欲しがるからといってやたらに潅水しても、根が窒息状態になるので、地表面がやや乾いたなと思ったらたっぷり与えるのが水やりのコツです。

 細かく少量ずつ潅水すると、地表面付近だけが湿っていて、20〜30cmぐらい下は乾いているようなことが多いものです。地表面はやや乾いても地中20〜30cm程度の白根が活動している土はしっとり湿っていて、白根が活発に働いて栄養分をしっかり吸収している状態が望ましいので、あまり頻繁に水やりはしないで、バラが喉が渇いてきたと訴えたら、すかさずたっぷり与えるのがコツなのです。

 白根の先端部は細胞分裂を繰り返しながら伸びて行きますが、この先端部は、バラの組織の中では唯一酸素を吸収しながら成長するので、年中水浸しだと根の成長が止まり、肥料成分を送れなかったり、根が萎縮したり、ひどい時は枯れることもあります。

 水やりは2〜3日に1回とか、1週間おきがよい、いや月に2回で済むなど、いろいろな表現や意見がありますが、その土地の環境で全く違うものです。地下水位が高くていつもじめじめしている場所と、地下水位が低い乾燥地や砂地の庭は、同列には扱えません。極端なことを言えば、恵みの雨だけで年間無潅水で済む土地がある反面、シーズン中の晴天続きには、ほとんど毎日水やりしなければ枯れてしまう過酷な条件の庭もあります。自分の庭の条件に応じて水やりをする、そのコツを会得するのが、バラを上手に育てる重要なポイントの一つです。

 尚、水質については汲み置きの水を使った方がよいとか、雨水を溜めておく、地下水がよい、いや池の水が最高だなど、うんちくを傾ける人もいますが、何を使っても問題にするほどの差はありません。水道水の塩素がよくないという意見もありますが、直接潅水しても支障はないので、安心してご使用ください。

 蛇口にホースをつなぎ、なるべく細かいハス口で散水すれば、水のはね返りによる病原菌の汚染も少なくなります。

 ところで、開花前1週間ほどになったら、一工夫してみましょう。バラの花弁は水が多いと大きく伸びますが、バラの魅力の色彩は水が少ない方が濃くなります。青ざめた水ぶくれの花よりも、きれいな色彩で花弁に張りがある花の方が数段立派です。水がたっぷりあると肥料も沢山吸収され花弁が育ちながら咲くので、すっきり咲きません。そこで花が咲く1週間〜10日ほど前に、水を控えて肥料を少なくすると色よく咲くのです。コンテストに出品される花はこのように一工夫されています。コンテストのことは別にしても、きれいな花が咲くのは嬉しいことです。


2. 副蕾(ふくらい)摘み

 HT種は、一般に四季咲き大輪種と言われています。文字通り1本の花枝(ステム)に1花だけ咲かせると、大輪種らしく大きな花が誇らしげに咲きます。主蕾と言われる中心の大きな蕾[つぼみ]のほかに、ほとんどの品種が主蕾の両脇に小さな蕾(副蕾)が二つついています。更にその下の葉のつけ根や、もう一段下から蕾が出るものもあります。これらの蕾を全部咲かせると、フロリバンダ(房咲き種)と変わらないほど沢山花を付けるものさえあります。普通は主蕾だけ残し、副蕾は指で折れるくらい早い時期に摘蕾して、主蕾だけ咲かせる事が多いのですが、これは好みの問題ですから、すべて咲かせて楽しむもよし、1輪1花の豪華さを愛でるもよし、というところでしょう。ドライフラワーに使いたいので、すべて咲かせて利用する人もいます。

 つるバラも、HT種の枝変わりのものは、副蕾を除去すればやはり大きくて立派に見えます。

 フロリバンダも最近の傾向で、花数が少ないものもありますが、沢山咲くのが本来の姿なので、自然にまかせて咲かせますが、ここで一工夫、中心の主蕾を早目に摘み取ると、ほかの花が揃ってバランスよく咲きます。惜しい気がしますが、思い切って早目に摘み取ってみてください。コンテストに出品されるバラは、ほとんどこのような処理をしています。




3. 病害虫防除

 開花中は花を汚したくないので、薬剤散布を行わない場合もありますが、病菌や害虫は常にバラを狙っています。なるべく10日間隔ぐらいの定期散布を守るのが懸命です。最近、いわゆる無農薬栽培がもてはやされ、効果が疑問視される薬品まがいのものが推奨されているようです。厳しい種々のテストをクリアーして承認された農薬は、特殊な場合を除いて、安全でよく効く薬品です。わけの分からないまがい品に惑わされず、合理的な薬剤散布を行ってください。

 今月は薬剤調合の方法と手順について述べてみます。一般的植物の葉や茎の表面は、クチクラ層と呼ばれる疎水性のワックスに覆われて保護されています。このワックス状の物質が、薬剤散布液を葉や茎につきにくくしているのです。降雨の後、葉の表面に水玉がきらきら輝いていることがありますが、これはそのために水が流れ落ち、水の表面張力で固まったものが水滴としてわずかに残っている姿です。

 薬剤散布の際に使用する展着剤は、この表面張力を弱める界面活性剤を主成分とした薬剤です。水の表面を収縮しようとする力を弱くして、水玉をなるべく平にすると、葉や茎に接触する面積が多くなり、従って付着しやすくなるわけです。これを‘ぬれ’をよくすると言います。

 水和剤やフロアブル剤、顆粒水和剤、液剤などにも界面活性剤は入っていますが、含有量が少なく表面張力が小さくならないので、散布液を調合するときは展着剤を加えることが必要です。

 ただし、乳剤には展着成分の界面活性剤が十分入っているので、乳剤単独で使用するときは展着剤は不要です。2種類以上の薬剤を混入する場合でも展着剤はいりません。ただし、乳剤だけを2種類以上混ぜると溶剤成分で薬害を起こし易くなったり、表面張力が弱くなり過ぎて薬液が流れ落ちて付着しにくくなったりします。

 薬剤調合の際、間違い易いのは、乳剤の量やフロアブル剤、液剤は、容積(ml)と重さ(g)がほぼ同じと考えてよいのですが、水和剤は粉末状で軽いので、容積と重さが同じではありません。薬剤によって異なり1.5倍〜3倍ほどの違いがあります。即ち1.5ml〜3ml=1g くらいということです。必ず容積ではなく重さで計量してください。尚、基本となる水の量は何種類混ぜても同量です。

 【手順】
   @ 所要量の水を容器に入れる
  A 乳剤を倍率に応じて@に入れる
  B 水和剤やフロアブル剤、顆粒水和剤、液剤などだけを調合するときは
    展着剤を@に先に入れる
  C 水和剤やフロアブル剤、顆粒水和剤、液剤などを@に入れる
    (水和剤は少量の水に溶いて、小さな固まり(ダマ)がないように
    よく混ぜてから@に入れる)
  D 2種類以上の水和剤を使用する場合は、それぞれ別々に
Cのカッコのようにする
(2種類以上を一緒にして少量の水に混ぜると、物理的変化を起こす恐れがある)
 
 
 
 


 <薬剤調合例:水1リットル当たり>
 Aオルトラン(水和剤) 1g  1000倍(殺虫) 
  ダコニール(フロアブル) 1ml  1000倍(ウドンコ病・クロホシ病) 
  展着剤 0.2ml  5000倍 
 Bアドマイヤフロアブル 0.5ml  2000倍(殺虫) 
  ダコニール(フロアブル) 1ml  1000倍(ウドンコ病・クロホシ病) 
  展着剤 0.2ml  5000倍 


※ ウドンコ病が発生したら、A、Bにルビゲン水和剤0.33g又はトリフミン乳剤0.5mlやバイコラール水和剤0.5gなどを追加します。
又クロホシ病が発生したら、サプロール乳剤1mlかラリー乳剤0.33ml又はマネージ乳剤2mlなどを追加します。
ウドンコ病とクロホシ病が同時発生の時は、ダコニールは止めてそれぞれ一緒に入れてください。

※ ハダニを見つけたら、ニッソランV乳剤・コロマイト水和剤・ダニカット乳剤・オサダン水和剤・ダニトロンフロアブルなどを追加します。
【倍率は説明書を見てください】

※ 上記の薬剤は、オサダン・ダニトロンを除いて殺卵・殺幼虫・殺成虫すべてに効きます。
なるべく同一薬剤は、年1回の使用としてください。

 4月の手入れでスプレー式の薬剤について触れましたが、‘大正園芸ゾル’と‘バラギク119’はいずれも登録失効となっているので、使用できなくなっています。又展着剤の中の‘ニーズ’についてもバラには登録されていないので使用不可です。お詫びして訂正します。

 尚、薬剤調合例で予防薬としていつもダコニールを使っています。予防薬としてウドンコ病とクロホシ病共に効果があるので真先に挙げているのですが、皮膚アレルギーを起こすこともあるので、そのような徴候があったら中止してください。又夏季の高温時には薬害を起こすこともありますから、オーソサイド水和剤やマンネブダイセンM水和剤、ジマンダイセン水和剤、サンヨールなどに切り替えてください。又年間使用回数がダコニールフロアブルは6回となっているので、マンネブダイセンやオーソサイド、ジマンダイセン、サンヨールなどとローテーションで使用するようにしてください。


4. 施肥

 元肥が入れてあれば、追肥は不要です。ただし、砂地で肥料が抜け易い庭だったら、月初めに高度化成肥料を1株当たり20〜30グラムほど追肥するとよいでしょう。  元肥を入れない追肥方式の場合は、開花時に肥料成分が少なくなるよう、月初めだけ追肥します。これまで通り発酵済み肥料なら1株当たり100グラム、高度化成肥料なら肥料成分が多いので、有機質肥料の1/4量20〜30グラムほどを根周りに撒き、たっぷり水やりしてください。  鉢植えは、肥料成分が抜け易いので、肥料切れを起こさないよう蕾が色づくまで追肥を続けます。  尚、液肥を使用する場合は、チッソが5%前後のものなら300倍、15%なら1000倍程度に薄めて、水やりがわりに与えてください。リンサンやカリの濃度は、多少濃くても根に障害を与えないのでチッソの濃度に基づいて薄めてください。



〔鉢植えの置肥量〕
鉢の大きさ
肥料の量
鉢土の量
 
(有機肥料)
(高度化成肥料)
 
3号
1〜2g
0.3〜0.5g
0.25リットル
4号
2〜3g
0.5〜0.8g
0.5リットル
5号
5g
1.3g
1リットル
6号
10g
2.5g
1.75リットル
7号
15〜20g
4〜5g
3リットル
8号
20〜25g
5〜6g
4リットル
9号
30〜35g
7.5〜9g
6リットル
10号
40〜50g
10〜13g
8リットル




5. 新苗の育て方

 植えたばかりの新苗も、ほかのバラと同じようにステムが伸びて蕾がつき、そのままにすると花が咲きます。花を見たい誘惑にかられますが、HTやフロリバンダはじっと我慢して、蕾が見えたら5枚葉の上でそっと摘まんでおきます(ピンチする)。禁断の花を咲かせると、まだひ弱な新苗には負担が大きく、後々の成長に悪影響を及ぼします。ピンチした箇所から、又芽が伸び出し蕾がつきますが、ピンチを繰り返します。やがて根元から新しいシュートが伸び出し、蕾が見えたら、このシュートの根元から数えて6〜8枚目ぐらい上の5枚葉の上でピンチします。このとき5枚葉のつけ根を見て、芽の先が毛のように細く伸びていたら(ヒゲ芽)、その下のピラミッド形の良芽を選んでピンチします。ヒゲ芽はすぐ蕾がつき、よいシュートにはなりません。このシュートのピンチ箇所から、再び芽が伸びて(2本伸び出したら上の1本だけにする)2回目のピンチをする時、最初にあった元枝を根元から切り取ります。この枝は新しいシュートを発生させるための元枝で、役目を終えたわけです。新しいシュートの2回目ピンチの頃になると、最初にピンチした1段目の葉が濃緑で、厚く固くなり、大切な光合成を十分行うことができる、一人前の葉になっているので、元の枝は切除しても大丈夫なのです。いつまでも残しておくと、無駄な養分を使うので、お礼を言って別れてもらいましょう。

 元枝も残した方が、光合成の助けになるとの意見もありますが、植物は本来葉がついているその枝(自分自身)を成長させるために栄養分を作るのであって、同じ木に属するほかの枝が伸びるための手助けはしません。人間にたとえれば、兄弟姉妹の助け合いはせず独立独歩なのです。自分自身が成長する、枝先から頂端の細胞が分裂して伸長するための栄養分を送り続けるのです。もし、どうしてもほかの枝に送りたいときは、出てくる新芽をすべてつぶし、栄養分の行き場を失わせると、やっとほかの部位に転送するようになります。そんな面倒なことをしなくても、新しいシュートが1人前になれば、元枝はもういらなくなるのです。秋まで大事にしても貧弱な枝になり、花も期待できません。ただ、不幸にして新しいシュートが出なかったり、途中で虫に食われたりして、元枝だけになることもあるので、新しいシュートが出てきたらすぐとか、最初のピンチを行った直後などには元枝を切除しないことも大切です。元枝だけでも残っていれば、7〜8月になってもシュートが出ることもあります。

 HT種は、できれば秋まで花を見るのを我慢して、次々に出るシュートのピンチを繰り返し、9月1日前後に剪定して秋花を咲かせてください。もちろんピンチなどしないで花を見ても、それで木が枯れるとか、衰弱するなどの心配はないのですが、かなり成長が遅れます。

  F種(フロリバンダ)は、HTに比べ丈夫ですから、シュートを一度ピンチしたら、次に伸び出したシュートには花を咲かせても、木の成長に支障はありません。

 ミニバラ(Min)は更に強健ですから、ピンチなどせずに、そのまま花をつけても元気によく育つので、初めから花を楽しんでください。

 つるバラは、今年1年間シュートを伸ばすことに専念して来年に備えます。伸び出したシュートは、面倒でも支柱などを添えて、なるべくまっすぐ上に伸ばしてください。横に倒すと、成長ホルモンが先端から各芽に分散して伸び出し、全体に枝数が増え細枝が多くなり、太い立派な主幹枝が少なくなります。細枝ばかりだと花も貧弱になります。

 オールド・ローズやモダンシュラブ、イングリッシュ・ローズなどの新苗も、シュートが伸び出し葉が固まってきたら、時期を見て元の枝は切除してシュートを育てます。四季咲き性のものは秋まで育てて、軽く剪定するようになります。

 尚、「育て方アドバイス」の新苗の育て方〈シュートピンチの要領〉もご参照ください。


6. その他

 【採花】
 庭花を楽しんでいる方にはあまり関係ないのですが、長い切り花を次々に切り、気がついたら残り葉がほとんどなくなり、バラ仲間の言う‘丸坊主’になることがしばしばです。地下では、地上部の葉に見合う根が伸びているので、一時に葉を失うとショックで根が萎縮します。庭花の場合も、訪問客や近所にせっせと切り花をとると、思いのほか葉数を減らすものです。できるだけ短く切って残り葉を多くしてください。あまり減らすと回復に苦労します。

 【用語について】
○ ヒゲ芽・・・先端が細くヒゲ状に伸びている芽。すぐ花が咲き、よいシュートにはならない。
○ 主蕾、副蕾・・・ステムの先端中心部につくのが主蕾、副蕾はその両脇や下部の葉のつけ根から出る蕾で、いずれもそのままにすれば開花する。

 【新苗の植えつけ】
 新苗の植えつけは4月が最適ですが、展覧会の会場などで求めることも多いのが実状です。最近の新苗はほとんどポットに入っていますから、もちろん5月でも大丈夫です。根傷みもありません。

 【根頭ガンシュ病】
 最近根頭ガンシュ病について興味深い文章が目に入りました。放送大学テキストの‘植物の科学’(平成21年4月新学期用)の中に植物の腫瘍について次のように書かれている箇所がありました。

 「(略)一般に腫瘍というと、動物ではそれを生体内から除去しない限り死に至る。しかし植物の場合は、クラウンゴール(ガン腫)ができることによって枯死したという話は聞かない。植物から全エネルギーを奪いとるほどクラウンゴールは大きく成長しない。実はT−DNAには腫瘍が過度に大きくなるのを抑制する遺伝子も乗っている。アグロバクターは、植物の成長をさほど妨げず適度な腫瘍を導入して、オパイン(注)を作らせていたのである。今日アグロバクターは、植物に遺伝子導入をする際に頻繁に用いられている」

 巧妙な手口で植物に入り込み遺伝的植民地化を果たしたアグロバクターは植物はやせ細っても、自らの食料は確保したわけです。更にその環境を維持し続けようと腫瘍の大きさを抑制する工作までしているのです。植物が枯れてはアグロバクターも生きて行けないので必死です。私達もこれを逆手にとって、バラのガンをこわがらず、ガンと共に生かす手立てを講じてはと思います。

 友人のところから、ひどいガンにかかっている株をあまりに元気がよいのでもらってきたことがあります。無数に増えたガンを取りきれず、いい加減に切除してそのまま植えて、その後様子を見ていますが、なんとか育っていますから、極端に弱らなければ大丈夫です。ガンそのものもある程度肥大すると自然に劣化して消滅することもあるし、切除したあと再発しないこともあります。楽観視しすぎでしょうか。以前は腫瘍の中には病原菌のアグロバクターは存在していないから、刃物からは伝染することはないと言われていましたが、このようなメカニズムが解明されると、病原菌が生きて存在しているのは疑う余地もありません。しかし、剪定バサミを使うたびに消毒するようなことは、実際には不可能です。言われるほど伝染力が強くないと思われるのですが如何でしょうか。ちなみに私は刃物の消毒は一切行っていません。

  (注)オパインは、アミノ酸に有機酸などが結合した化合物で、一般に植物や細菌類はそれを利用することはできない。しかしながら、アグロバクターはオパインを分解する酵素を持っているため、クラウンゴールで大量に作られるオパインをエネルギー源として独り占めできるのです。

文責・成田光雄






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